キャビテーションとは

キャビテーション(Cavitation)は、液体の圧力が変化して飽和蒸気圧より低くなった時に、液体中に気泡が発生(気化)する現象で、空洞現象とも呼ばれています。似た現象に沸騰がありますが、沸騰は、液体の温度が変化して沸点を超えたときに気化する現象です。キャビテーションにより発生した気泡は、液体の圧力が回復するか飽和蒸気圧より高い地点に移動すると凝縮して消滅します。この気泡が消滅するまでを含めて、キャビテーションと呼ぶこともあります。

キャビテーションの発生

キャビテーションは、液体の圧力が飽和蒸気圧より低くなった時に発生します。この飽和蒸気圧は、液体の種類や温度によってそれぞれ決まっており、例えば、水の場合は25℃で3.166kPaなので、水温が25℃一定で水圧が3.166kPaより高ければキャビテーションは発生しませんが、3.166kPaより低くなるとキャビテーションが発生します。基本的には、液体の圧力を高くして飽和蒸気圧以上に保つように注意すれば、キャビテーションの発生を防ぐことができますが、液体の圧力や飽和蒸気圧は様々な原因で変化するので、ある一定の条件を満たした場合、キャビテーションが発生する事があります。下記にいくつかの例を示します。

・ポンプでのキャビテーションの発生
ポンプは、液体を吸い込んで、圧力と速度を与えて吐き出す装置なので、吸い込み側(吸引側)の圧力は低くなり、吐き出す側(排出側)の圧力は高くなります。例えば、ポンプの流量を上げすぎたりすると、吸引側の液体の圧力が飽和蒸気圧よりも低くなり、キャビテーションが発生する事があります。また、ポンプでは吸引側にフィルターがついている事があり、フィルターが目詰まりすると、液体が通過しにくくなり、フィルターの上流側の圧力が高くなり、下流側の圧力が低くなり、下流側の液体の圧力が飽和蒸気圧よりも低くなるとキャビテーションが発生します。なお、プロペラ式のポンプの場合は、プロペラの羽根部でキャビテーションが発生する場合もあります(後述の「プロペラの羽根部でのキャビテーションの発生」参照)。

・配管、パイプでのキャビテーションの発生
配管内の液体の圧力は、パイプの内径や流速、配管の形状などによって変化します。例えば、配管の途中に絞りがあると、絞りの下流側で圧力が低くなり、キャビテーションが発生する場合があります。また、分岐管や曲げ管では局所的に圧力が低下したり、構造上で局所的に流速が速くなる箇所やバルブの急な開閉などでも液体の圧力が低下したりして、キャビテーションが発生する事があります。

・プロペラの羽根部でのキャビテーションの発生
船や潜水艦などに使用されるプロペラは、揚力を得るために、羽根部(ブレード部)の形状が腹面と背面で異なっており、プロペラが回転すると背面側の液体の圧力が低くなる構造になっています。この背面側の液体の圧力は、プロペラの回転速度が速くなるほど低くなる為、液体の飽和蒸気圧より低くなった箇所でキャビテーションが発生します。

・温度変化によるキャビテーションの発生
液体の圧力が一定の場合であっても、液体の温度が上昇すると、液体の飽和蒸気圧が高く変化し、キャビテーションが発生する場合があります。例えば、水の飽和蒸気圧は、25℃で3.166kPa、70℃で31.162kPaなので、水圧が20kPaの場合、25℃ではキャビテーションは発生しませんが、水温が上昇して70℃になると、70℃の飽和蒸気圧(31.162kPa)よりも水圧(20kPa)の方が低くなってしまう為、キャビテーションが発生します。特に、局所的に水圧が低くなる箇所がある場合は、水温が上昇すると局所的にキャビテーションが発生しやすくなります。

・その他
他にも、配管等では経年劣化による変形やポンプの不良、汚れの蓄積などによってもキャビテーションが発生する事があります。また、上記の原因が複合的に合わさって発生する場合もあります。

キャビテーションによる影響・障害

キャビテーションによる影響として、代表的なものにエロージョン(壊食)とポンプの異常があります。通常、キャビテーションにより圧力が低い部分で発生した気泡は、圧力の回復等により消滅(凝縮)します。この気泡が消滅する際、気泡は急激に消滅するので、強い衝撃波(圧力波)が発生します。この衝撃波が継続的に発生すると、機械的な浸食により、プロペラの表面や管の内壁などを傷つけるエロージョンが発生します。このエロージョンが長期間継続して発生すると、傷になった部分でコロージョン(腐食)が併せて発生したり、傷が大きくなってプロペラや管に亀裂が入ったり、穴があいたりすることがあります。また、ポンプでは、気泡が消滅する際の衝撃波により、ポンプ自体が破損したり、振動や騒音が発生したりすることがあり、加えて、液体に気泡が混ざることで、想定した性能を発揮できないこともあります。さらに、ボルトが緩んだり、配管やポンプの寿命が短くなったりする原因となります。

キャビテーションの対策

キャビテーションにより障害が発生すると、破損部品の交換などで、工場の稼働停止につながることがあります。その為、キャビテーションの対策として、発生自体を防止する対策と、発生した場合の対策の両方を考えることが重要になります。

まず、キャビテーションの発生を防止する為には、設計の段階で対策しておく必要があります。配管であれば、適切な管の材質や径の選択、曲げ管や分岐管などでの圧力損失を計算した配管設計などでキャビテーションを防止することができます。また、ポンプであれば、必要な仕様に対して余裕を持った性能のポンプを選択したり、低い位置に設置して吸い込み側の圧力を確保したりすることが大切です。他にも、液体の流量の制御や液体の温度を低くしたり、定期的なメンテナンスで汚れを洗浄したり、さびを除去したりすることもキャビテーションを防止する対策となります。

次に、キャビテーションが発生した場合の対策としては、液体中の気泡を検出する専用のセンサーを使用することで、キャビテーションの発生を素早く認知することができます。この気泡を検出する専用のセンサーを、気泡が発生する可能性が高い部分などに取り付けておくことで、キャビテーションが発生してもすぐに検知し、流量の調整や原因の調査などの対応が迅速に行え、キャビテーションの影響を最小限にとどめることができます。

液体中の気泡を正確に検出するのは長年の課題となっていましたが、スイスBaumer社は、この課題を解決する為に、独自の検出原理を利用したキャビテーションセンサーを開発しました。キャビテーションセンサー PAD20シリーズの詳細については、お手数ですが、下記の連絡先よりお問い合わせください。

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